フレイルとサルコペニアについて ~①活き活きとした老後を保つために~
皆さん、猛烈な暑さが続いていますが、ご機嫌如何でしょうか?
しっかりと自己管理してこの夏を乗り切ってくださいね!
健康長寿の妨げとなる「サルコペニア」とは?
さて皆さんは、見出しの難しい単語を見聞きしたことがありますでしょうか??
ご存知の通り、世界的に社会の高齢化は大きな問題となっていますが、
高齢者の機能障害(Disability)や要介護に至ることを予防するためには、
疾病の管理とともに「老年症候群の管理」が重要です。
なかでも生活機能障害を招き、健康長寿の妨げになるものとしてフレイル(Frailty)や
サルコペニアが近年非常に注目されています。
「フレイル」は高齢期に生理的予備能(いわゆる、踏ん張りや余力)が低下することで
ストレスに対する脆弱性が亢進し、機能障害・要介護状態・死亡などの不幸な転機に陥りやすい状態とされ、
生理的な加齢変化と機能障害・要介護状態の間にある状態として理解されています。
しかしながら、その定義・診断基準については世界的に多くの研究者たちによって
議論が行われているにもかかわらず、未だコンセンサスが得られていないのが現状です。
一方、「サルコペニア」は1989年 Rosenberg によって提唱された概念で、
加齢に伴って筋肉が減少する病態で、握力や歩行速度の低下など機能的な側面をも含めた概念です。
サルコペニアが進行すると転倒・活動度低下が生じやすく、
高齢者においては運動機能・身体機能を低下させるばかりでなく、
フレイルが進行して要介護状態・そして生命予後や
ADL(日常生活での活動レベル)を悪化させてしまうため、早期からの対策が必要です。
サルコペニアの語源は、サルコ=骨格筋・筋肉(Sarco)が、ペニア=減少(penia)からきています。
人の筋肉はしっかり鍛えられていないと筋肉細胞は減っていき、次第に体を支えられなくなっていきます。
一般的に、「筋肉量」は30歳ごろがピークであり、その後は加齢とともに低下します。
70歳以下の高齢者の13~24%に、80歳以上では50%以上に、サルコペニアを認めるという報告があります。
またサルコペニアというのは、加齢に伴い「筋力」が著しく低下しした状態も言います。
筋力は25~30歳くらいに最大となり、その後は徐々に低下し、50~60歳以降には低下が大きくなります。
「足の筋力が落ちてきて、つまずくことが多い」「自分の足で立ち上がることがしんどくて、立ち上がる時に机などに手をつく」
「昔のように速く走れなくなった、握力も少し弱くなったようだ。」とは感じませんか?
こんな方は、もうすでにサルコペニアがはじまっているのかも知れません。
身体は主に足から弱る、と言われていますが、
これが高齢期の転倒・骨折・寝たきりなどの一番の原因になっていると考えられています。
筋肉の老化は、血管や骨などの老化と比べると、自覚しやすいもののひとつです。
サルコペニアは、加齢とともに筋肉量の減少や筋萎縮が進んでしまった状態です。
とくに、70~75歳頃からこの症状になる人が増え始め、75歳頃から目立って増えてきます。
サルコペニアは体力を低下させる大きな要因であり、寝たきりのリスク高めます。
サルコペニアを引き起こす4つの原因
しかし、「ある程度年をとれば、誰でもそうなのだから」とあまり危機感を感じていないのも事実です。
実際のところ、余程のことがない限り日常生活には差し支えることはありません。
筋肉の老化には「筋肉量の減少」と「筋力の低下」というふたつの側面があります。
「力が出なくなってきた」と感じる場合は、
単に筋力が低下しただけでなく、筋肉量の減少も疑ってみることが必要です。
「筋肉量」というのは、自分で維持するように努力しない限り、
加齢とともにだんだん減ってきます。そして、年齢が高くなるにつれて、サルコペニアを発症するリスクが増してきます。
サルコペニアの原因として学問的には以下の4つが挙げられています。
- 加齢のみが原因の場合の「原発性サルコペニア」(=狭義のサルコペニア)
- 活動に関連(廃用,無重力による変化)
- 栄養に関連(エネルギー摂取不足,飢餓による変化)
- 疾患に関連(侵襲,悪液質,神経筋疾患などによる)
上記のうち、②~④を二次性サルコペニア(広義のサルコペニア要因)と呼んでいます。
サルコペニアのこの4つの原因をすべて認める場合には、疾患の治療と適切な栄養管理を優先します。
この場合、筋力トレーニングは行いません。
機能維持を目標とした関節可動域訓練や座位訓練のみ行います。
ある程度原疾患が落ち着き、栄養管理が適切であれば、その後、筋力トレーニングに進みます。
次号では、加齢のみが原因の場合の原発性サルコペニアの対処方法として
有効なリハビリ(筋力トレーニング)や食事について考えます。(次号へ続く)