賢い医者のかかり方 ~こうすればよりスムーズに~
みなさん、これまで色々な病気や検査で内科や整形外科、耳鼻科、眼科などに受診された経験があると思います。
その時、皆さんが気にしている症状や体調の変化をなかなか
うまく先生に伝えられずに悶々としたことは無いでしょうか?
知何に要領よく医者に自分の症状を理解してもらい、最良の医療を選択し、
より最短で病気をコントロール(そして治癒)できるようにするにはちょっとしたコツがあります。
今回は、私が診療している上で大切だと感じているポイントを少しお話してみたいと思います。
1. 初診の場合
初診時には、問診票の記入が必要ですが、
この情報は治療・検査の方向性の決定や投薬の選択に大きな影響を与えます。
当院の問診票にならってコメントします。
まず、受診されたきっかけとして、「いつごろその症状なのか?」です。
ここ数日の急性期の症状なのか?1週間以上たっての亜急性期なのか?
またここ数か月以上続く慢性的なものか?の時間的なコメントはとても大事です。
「風邪様症状で受診です。」と言っても、慢性的な鼻炎症状は数か月前からあって、
今回新たに急性期症状の熱・咳・疾が認められれば、それはベースの「鼻炎」に加えて
今回新たに「感官」が入っているので、両方の治療をする方が望ましいことが多いです。
そうしないと、「熱は収まってしんどくなくなったのに、いつまで、たっても咳が取れない。」
といった後鼻漏(鼻汁が咽頭から気管に向かつて垂れ込んでいく状態)による咳につながります。
後鼻漏による咳の特徴は、端息のようにヒューヒューゼーゼーと常時咳込むのではなく、
臥床や会話途中・深吸気時等に「突発的に」咳込んでしまうのです。
そしてオエッとなるまで咳込んだ後は案外普通に戻ります。
今年の冬から春にかけて、そういった患者さんが多かったように思います。
こういった場合、抗生剤や去疾剤・鎮咳剤では効果がなく、
鼻炎治療もしっかりと行うことが肝要です。
現在は、花粉・黄砂・ PM2. 5と色々なものが飛散していますので、
どうしても鼻炎や噛息や肺気腫などの慢性肺疾患の悪化を来しやすく、
いろいろな観点からアプローチしなければいけません。
そのため、問診票に書いている過去や現在の疾患、
アレルギー疾患の有無のチェックが必要となります。
さらには、過去に薬・注射や検査薬での副作用はしっかりと記入しておかないと、
誤って処方・服用してしまい大変な健康被害を来すこともありえます。
他院にも通院中の方は、現在では多くの場合
「お薬手帳」をお持ちだと思いますが、これは常に携帯しておいてください。
胃薬や鎮痛剤等の重複投与を防いだり、他院処方中の薬から現在の病気を類推できますし、
例えば歩行障害で受診された患者の原因が抗うつ薬の副作用だったことが判明し、中止することで、あっさり治癒しました。
既往歴や家族歴も大切で、腹痛がある場合ガンの既往があれば転移や再発等も考慮し、
家族性に大腸癌が多ければ遺伝的に大腸癌をきたしやすい家系(家族性ポリポーシス)なため
大腸ファイパーをお勧めする必要性も出てきます。
噌好についても、喫煙は肺癌(喫煙本数×喫煙年数が400以上となればリスク大)・舌癌・咽頭癌・食道癌だけでなく
脳梗塞や心筋梗塞のリスクとなる他、肺気腫・慢性気管支炎等から
呼吸不全となり在宅酸素療法が必要となりえるため、禁煙療法をお勧めします。
またアルコールを良く飲まれる方で肝機能異常(アルコール性肝炎・脂肪肝)を来すことはありますが、
最近NASH(非アルコーノレ性脂肪性肝炎)といって肝硬変や肝癌になる恐れのある
アルコールなし(または少量)で発症する肝炎も報告されており注意が必要です。
予防接種の既往についても大切で、以前の麻疹の流行や最近の風疹の流行のように、
風邪だと思っていたらブツプツが出てきて…の場合には診断の手助けになります。
2. 再診の場合
治療が継続し症状が安定していても、定期的な受診の際には
前回受診日以降に出た症状や質問事項を簡単にメモ書きしておくと忘れなくていいですよね。
その際に大切なのは、「いつ(消化器症状なら食事との関連) 」
「どこが」「どのように(痛みならズキズキ・チクチクとか)」
「どれくらい(程度・持続時間)」などのポイントも忘れずに残しておきましょう。
一般的に注意しなければいけない症状は、「何かをすれば必ず(再現性) 」や
「だんだん酷くなる(増悪傾向)」といった特徴がある症状です。
「そう言えば、~なこともある」は「~でないこともある」と
同義ですので余り心配する必要はないかと思います。
また他院のお薬が変わったりした場合はすぐにご報告ください。
逆もまた然りで、他院の主治医に対しては当院の薬含めて
自分の内服薬を把握してもらっておいてください。
薬の相互作用については、新しく追加・変更する薬を処方する先生が
チェックして処方しなければいけませんので…。
特に、今は花粉症のシーズンですが、アレルギー薬によって
緑内障・前立腺肥大の悪化など起こりうるので要注意です。
また、胃カメラやCT・MRI等を他院で受けてもらう場合がありますが、
その検査結果の説明を「その病院・医院で充分に」受けてきてくださいね。
何かの病変を指摘された場合は、病気の名前を聞き、それは放置でいいのか?
経過観察は必要か?フォローするなら今度は何時?手術必要ならどうすればいいのか?
(その先生だったら何処に紹介するのか?)といった具合に、
その道のプロ(専門医)に相談できるチャンスですので、
しっかりとお話しを聞いて納得してきてください。
このように、様々な情報を共有することで皆さんの病気の状態や臨床経過を
より決め細やかに認識できる為、より良い治療
ひいては皆さんの健康増進により貢献できるようになります。